なぜ、見世物小屋で演芸を行うのか。劇団「ゴキブリコンビナート」Dr.エクアドル インタビュー。

見世物小屋で演芸を行うようになったきっかけ、ヤモリ女、中国の串刺し達人などの演芸の背景などについて、ゴキブリコンビナートの団長Dr.エクアドル氏に尋ねた。

Interview | 2017.03.01

室町時代にはじまり、江戸時代に隆盛を極め、大衆的なエンターテイメントとして、現在のテレビや映画、美術館や動物園などの役割を果たしてきた見世物小屋。昭和に入り少しずつ数を減らしはじめ、現在日本で見世物小屋の興行を行っているのは「大寅興行社」1社のみとなっている。その大寅興行社もさまざまな理由で自らが演芸を行うのではなく、若い世代の他の団体に見世物小屋での演芸を任せている。
2016年、新宿・花園神社で行われた見世物小屋、そこでヤモリ女による悪食の実演や中国の串刺し達人などの演芸を行ったのが、劇団「ゴキブリコンビナート」だ。

ゴキブリコンビナートによる花園神社での見世物小屋の演芸

今回、ゴキブリコンビナートの団長であるDr.エクアドル氏に、見世物小屋で演芸を行うようになったきっかけから、演芸の背景などについて尋ねた。

Dr.エクアドル氏・花園神社の見世物小屋興行地にて

見世物小屋を残すために大寅興行社から声がかかり、見世物をポップ解釈した演芸を展開。
--見世物小屋で演芸を行うようになったきっかけを教えてください。
Dr.エクアドル(以下 エクアドル):もともとは知り合いの、劇団「第七病棟」に所属していた入方勇くんが大寅興行社に弟子入りをし、その後、独立して「入方興行社」を立ち上げるという話になり、私は舞台の美術の裏方をやっているので、小屋などの建込みスタッフとして一緒に活動するようになりました。あるとき、靖国神社の見世物小屋で、演芸のワンコーナーを担当させてもらったのをきっかけに、構成をすべてやってくれ、という話になったのです。あくまで興行を行っているのは入方興行社だけど、演目はゴキブリコンビナートが構成するという形です。その後入方くんが若くして亡くなってしまい、入方興行社も活動不能になりました。さらに、大寅興行社のお峰太夫さんも見世物小屋に出っぱなしで演目を行うのは厳しい。このままでは見世物小屋で演芸ができなくなってしまう。だが、見世物小屋は残したい。そこで、大寅興行社が唄と踊りを出し物にするデリシャスウィートスに見世物小屋で演芸をやらないか、と話をして、デリシャスウィートスが5年間程演芸をしていました。その後、大寅興行社からゴキブリコンビナートに話がきて、見世物小屋で演芸を行うようになった、という流れです。
--見世物小屋で演芸を行うにあたり、大寅興行社の方から守って欲しいと言われているようなことはあるのでしょうか?
エクアドル:大寅さんからの要望は何もありません。われわれはポップ解釈というか、少しちゃかしているという雰囲気もあるので、耽美でドロドロしたものが見世物小屋の伝統だというイメージを抱いている人がイメージと違いがっかりして帰るということもあります。ただ、大寅さんに言わせると、昔の見世物小屋は何でもありで、ストリップをやっている小屋もあったし、動物がいるだけの小屋もあったりした。いわゆる、少女椿のような、本物のサイドショーがずらっと軒を連ねていたわけではなく、雑多だったんです。
確かに見世物小屋といえばフリークスショーのような、おどろおどろしいものを想像してしまうが、興行主である大寅興行社の視点としては、そのようなものだけが見世物小屋なのではなく、多様なものが見世物小屋の文化だと認識しているようだ。続いて、演芸について尋ねた。
動物愛護団体からのクレームにより鶏・蛇を食べる演芸の中止、ヤモリ女の誕生へ。
--大寅興行社さんの人気のあった演芸で、蛇を食べるもの(蛇女による悪食の実演)があったかと思うのですが、あのような演芸はやらなくなってしまったのですか?
エクアドル:以前博多で見世物小屋の興行をしているときに「バサバラシ」というニワトリを食べる演芸を行った際、動物愛護団体の方が怒鳴り込んできたんです。その行為自体には法的権限はないので、怒鳴り込んでくるだけなら突っぱねられたんですが、警察を連れてきたことがきっかけで、蛇や鶏を食べる演芸は行わなくなりました。
--続いてゴキブリコンビナートの演芸についてお伺いします。2016年の花園神社で行っていた「ヤモリ女」や「中国の串刺し達人」はどのようなきっかけで生まれたのですか?
エクアドル:ヤモリ女は、ニワトリが博多で食べれなくなったときに、近いもので何かないか、ということで蛇を食べれるゴキブリコンビナートのメンバーに、これは食える・食えないというのを聞きつつ、法律的に問題がないところを調べたんです。例えば、動物愛護とはいえ、殺虫剤で蚊を殺すのは問題ない。なので、虫はいいはずだと。どこに境界線を引くのかは恣意的なもののようですが、爬虫類と両生類の間に法律の線引きがあるらしく、爬虫類はむやみに殺すと犯罪、けど両生類はOKという認識がある。その辺りのギリギリのラインをついた結果、虫を食べる形に落ち着いたんです。

演芸:ヤモリ女

エクアドル:中国の串刺し達人は、タイの「ベジタリアンフェスティバル」という、いろんなものをほっぺたに刺して練り歩くお祭りがあるんです。しかもそれが、ネギとかラジカセのアンテナを刺しているとか、ふざけているのではないかというくらいの強烈なパレードで。それを見たときにちょうど「だんご三兄弟」が流行っていて、これをかけ合わせたものをやってみよう、と。練習して確認もできないから、ぶっつけ本番でやってみたのがきっかけです。ちなみに見世物小屋では1人のみの演芸ですが、サディスティックサーカスというイベントでは、3人で串刺しになっています。

演芸:中国の串刺し達人

ハプニングバーからライブハウス、そして見世物小屋。さまざまな場所で活動。
--見世物小屋で行う演芸は、見世物小屋の中だけで行っているわけではなく、他のイベントでも重複する可能性もあるのですね。その辺りはどのように差別化しているのでしょうか?
エクアドル:空間に合わせて、最適なものをつくっているんです。ぼくらは活動の幅が広く、例えば、ハプニングバーでやったりもする。その場合、ハプニングバーにくるお客さんはどのようなものを求めているのか。また、ライブハウスでバンドとバンドの間でやったりもする。他のバンドがハードコアパンクだったときに、どのようなものが最適なのか。ぼくらは仕込み・立て込みなど、物を大量に出すので、空間的な制約もあり、そのあたりをすべて考え、この空間ならこうする、というところも考えてやっているんです。見世物小屋でやるのも同様で、見世物小屋という空間できることを考え、行っているんです。
--一般的に見世物小屋で行う演芸は「見世物」とされると思います。ただ、ゴキブリコンビナートという劇団が空間に合わせて展開しているのだとしたら、それは「見世物」なのでしょうか、「演劇」なのかでしょうか?
エクアドル:見世物でしょうね。芸を見せている。芝居を見せていない。芸を軸に芝居がある、という形なので。元々、演技の上手さでやっている劇団でもないので、 見世物的な演劇なんです。微妙な間の取り方で洗練された演技を見せているわけではなく、どこで楽しませているかというと、やたら体張っていたりとか、そのわりには報われないオチだとかで楽しませているので、それを広い意味で見世物だと言えてしまうんです。バランスは変えているんですが、明確な切り替えはありません。本公演が見世物化していても、見世物で1時間30分持たせられるものがあれば、それを本公演としてやってもいいと思っています。 ゴキブリコンビナートが何か、というと、劇団と銘打っているけれど、演劇だけが好きなわけでもない。フェティッシュショーの間でやるのも、バンドの間でやるのも、すべてゴキブリコンビナート。それが演劇なのか、というところはあまり関係ないんです。あくまで、演劇は手段。こういう歌うたえます、見世物できます、こういうセットが組めます、というところの手段の一つに過ぎません。
行儀よくショーケースには収まらず、タブーに触れる演芸を。
--最後に、ゴキブリコンビナートが追求しているテーマはどのようなものなのでしょうか?
エクアドル:体を酷使する、というところですね。例えば、本公演では五感を総導入する、という言い方をしています。ある空間の中にそれが置かれたときに、できるだけ平面的にならずに多面的に展開し、ライブとして空間を共有しているからこそできることをする。例えば、見世物だとあまりできないのですが、野人がいろんなところから出てきて、客に絡むなど。本公演だと、行儀よくショーケースに収まらないように舞台と観客という関係性も取っ払ってしまいます。客と舞台の境界を破る。そこで何か感情的に高まったことを描きたい。怒ってるとか、悲しんでるとか。このあたりは自分が芝居の人だな、と思うところです。 それともう一つは、これも見世物は大人しめにしてますが、タブーに触れるネタを入れ込む。これらはあらゆる作品に共通している。楽しくハッピーエンドで見た人に希望が残るようなものはつくらない。隠れているものを表に出す、というところをテーマにしていて、本公演ではそれを全開にして出すが、見世物ではそれをさまざまな人がくるので、若干オブラートに包んでいます。
本公演を行うための、出張としての見世物小屋での演芸というわけでもなく、見世物小屋で演劇をやっているのでもない。本公演もある種見世物的でもあり、演劇的でもある。ゴキブリコンビナートという劇団は定義することができなく、場所や空間に応じて、コアとなる「体を酷使する」や「タブーに触れる」などの部分を活かして、ゴキブリコンビナートらしいものをつくりだしていた。
2017年には本公演を行いたいとの話もしてくれたので、見世物小屋ももちろんのこと、本公演に足を運んで、ぜひ実際に五感で体験してみて欲しい。公演情報などがあれば、こちらから発信していく。
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・ヤモリ女、暴れる野人、串刺しの中国達人・・・撮影禁止の見世物小屋の中を独占取材!
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